松方コレクション展(国立西洋美術館・上野)に行きました

松方コレクション展の画像

国立西洋美術館の画像

モネ「睡蓮、柳の反映」|松方コレクション展|国立西洋美術館(上野)の画像

上野の国立西洋美術館の「松方コレクション展」のレポートです☆

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松方コレクション展

モネやルノワールやゴッホなどの名作が集められた松方コレクション展を観に行きました。
松方コレクション展|上野の写真
国立西洋美術館の前の松方コレクション展の看板に使われている絵は、私の大好きなモネの睡蓮です。
松方コレクション展|国立西洋美術館の画像

お昼過ぎ頃に行ったのですが、チケット売り場は長蛇の列でした。
国立西洋美術館(上野)の写真
高校生ぐらいの若い人も多かったです。
入場規制をしているからか列はなかなか進まず、並んでから入館するまでに20分ぐらいかかりました。
松方コレクション展はすごく人気があるようです。

暑いときに並ぶのは大変なので、土日や休日などは事前にネットでチケットを購入してから行ったほうがいいと思います。

松方コレクションとは

松方コレクションは、神戸の川崎造船所(現・川崎重工業)の初代社長などを務めた松方幸次郎氏が個人で収集した美術品のコレクションです。

松方氏は、第一次世界大戦中に欧米各国で国民の愛国心を煽るポスターが至る所に貼られていたのを見て「貧弱なポスターしかない日本は文化の面でも欧米に遅れをとっている」と感じ、優れた西洋画に触れられる機会がない日本の貧しい画学生たちに海外の優れたアートを見せたいという想いで、1910~20年代にヨーロッパ各地で美術品を買い集めたそうです。

そのコレクションを代表する作品のひとつであるクロード・モネの睡蓮は、松方幸次郎氏がモネのアトリエを訪れモネ本人から直接購入したそうです。

松方氏がモネから購入した作品はどれもモネ自身のお気に入りで、コレクターには売らないと決めていた作品ばかりでしたが、「あなたの素晴らしい絵を日本の貧しい画学生に見せたい」という松方氏の私欲のない純粋な思いを知ったモネは絵画を譲ることを承諾したといわれています。

松方氏は、買い集めた美術品を展示するために「共に楽しむ」という意味を込めて名付けた「共楽美術館」の建設を計画しました。
美術品の収集も美術館の建設もすべて松方氏の私財を投じて行うのに、美術館の名前を「松方美術館」にせずに「共楽美術館」にしたところに松方氏の私欲のないおおらかさを感じます。

共楽美術館は、松方氏の美術品収集の相談役を務めていたイギリスの画家フランク・ブラングィンが設計案を作り、東京の麻布に用地も確保されていました。
しかし、関東大震災の打撃により美術館建設の計画は中断し、さらに関東大震災の復興資金のために国が絵画の輸入に対して10割の関税をかけたことや、世界大恐慌で川崎造船所の経営が破綻し美術品が差し押さえられたことや、第二次世界大戦によるコレクションの散逸、焼失などによって多くのコレクションが失われたことで、松方氏の共楽美術館建設の夢は儚く消え去りました。

第二次世界大戦の際に敵国のフランスに接収されていた松方コレクションの一部は戦後、当時首相だった吉田茂の交渉により日本へ寄贈返還されました。

このフランスから寄贈返還された松方コレクションの展示場所として、また、日仏間の国交回復と関係改善の象徴として、1959年に上野の国立西洋美術館が作られました。

近代建築の巨匠といわれるフランス人建築家ル・コルビュジエの設計で作られたこの国立西洋美術館は、2016年に世界遺産に認定されています。
日本では20件目の世界遺産です。

今回の「松方コレクション展」は、この国立西洋美術館の60周年記念展として企画されたものです。

日本の文化向上のために個人の私財を投じて美術品収集に奔走した松方幸次郎氏の情熱や、松方コレクションの展示のために国立西洋美術館が作られるまでの歴史的、国際的な背景などを考えると、今回の「松方コレクション展」は単に優れた名画を集めた美術展であるというだけではなく、「松方コレクション」というもの自体にとても壮大なロマンを感じます。

松方コレクション展に展示されている名画の1つ1つが、松方氏が海外の優れたアートを日本人に見せたいという志をもって買い集めたものだと思いながら鑑賞すると、とても感慨深いものがあり、こんな素晴らしい名画の実物を日本にいながら見ることができるということがとてもありがたく感じます。

国立西洋美術館の60周年記念ということは、戦争の大変動の時代をくぐり抜けて日本に返還された松方コレクションが国立西洋美術館に所蔵されてから60年が経ったということで、それはつまり、この60年間がこれらのコレクションを安全に保持できるほど平和な時代であったということなので、平和への感謝の気持ちも改めて感じさせられます。

日本人に素晴らしい絵を見せるために美術館を作りたいという松方氏の夢は、松方氏の生前には残念ながら叶えられませんでしたが、その志を受け継いた人たちの尽力によってこうして立派な美術館が作られて60年間も無事に保たれ続け、多くの人たちがその美術館に足を運んで松方コレクションを楽しみ、松方氏の夢がこうして立派に叶えられているということはとても素晴らしいことだと思います。

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松方コレクション展の作品

私は印象派の絵が好きなので、松方コレクション展に行こうと思ったのは、松方コレクションの中にモネの作品がいくつかあったからです。

ただ、松方コレクションはとくに印象派の作品に偏っているというわけではなく、多種多様な作品が集められています。

通常、個人のコレクションの場合はその個人の趣味によって作品を買い集めることが多いため、コレクションの傾向に特色がある場合が多いのですが、松方コレクションは松方氏の個人的な趣味で作品を買い集めたわけではなく、西洋の優れた芸術作品を日本人に見せたいというのが目的であったため、ジャンルにそれほど大きな偏りはありません。
とにかく芸術性の高いと思われる作品を片っ端から収集したというような感じのコレクションです。

館内を入って一番最初に展示されているのがモネの睡蓮です。
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モネの睡蓮はいろんなバージョンがありますが、私はこの松方コレクションの睡蓮が一番好きで、この睡蓮の複製画を買って壁に飾っていたことがあります。
その絵の本物を目の前で見ることができて、とても幸せです(〃▽〃)マツカタサン アリガトウ☆

本当にいい作品なので、モネもきっとこの絵は特別に気に入っていて、手放したくなかったけど、素晴らしい作品を日本人に見せたいという松方氏の純粋な思いに胸を打たれて手放したんだろうな…と思います。
なので、一時期はフランスに接収されたりもしたけれど、なんとか無事に日本に渡ってこられて、こうして多くの人に鑑賞されることができて、松方氏がモネに語ったことがちゃんと実現されて本当によかったと思います。

モネの絵は、睡蓮以外に「積みわら」や「舟遊び」もありました。
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「舟遊び」はボートに二人の女性(モネに娘)が乗っている絵ですが、青空が映っている水面の描写が睡蓮と同じようなタッチで描かれていてとても素敵です。

彫刻もあって、有名なロダン「考える人」もありました。
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ロダンの「考える人」は等身大ぐらいの彫刻だと勝手に思い込んでいたのですが、思っていたよりも小さかったのでちょっとびっくり。
部屋に飾れそうなぐらいのコンパクトさです。

ゴッホの「アルルの寝室」もありました。
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この絵はフランスが返還を拒否したためオルセー美術館に所蔵されているものですが、今回の美術展のために貸し出されたようです。
ゴッホの作品の中では比較的穏やかな感じがしますが、ゴッホの作品の多くがそうであるように青と黄色がメインに使われていて、その独特な色使いにゴッホらしさを感じます。
この絵に描かれているのはゴッホの部屋で、ゴッホはこの部屋の絵を3枚描いています。
同じ部屋の絵なのにそれぞれ色使いや雰囲気がかなり違っていて、そのときのゴッホの精神状態が絵に投影されているようです。
その3枚の絵の中で、最後に描いたとされるこの「アルルの寝室」が、一番あたたかみがあってやさしい感じがします。

印象派が好きなので、印象派の絵の解説ばかりになってしまいますが、ルノワールの「アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)」と「帽子の女」という絵もありました。
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「帽子の女」の真珠色に輝く白いドレスが印象的です。
このふわっとした月光のようなやわらかい光を放つ白色がルノワールの魅力だと思います。

それ以外にも沢山の名画が展示されていましたが、今回の美術展のラストを飾る絵はモネの「睡蓮、柳の反映」です。

この絵は第2次大戦中に松方氏の部下がパリ郊外に疎開させたのちに行方不明になり、それがどういうわけか2016年にパリのルーヴル美術館の展示スペース裏の一角で丸めた状態で見つかったそうです。
縦199.3×横424.4センチという大作で、モネが生前に売却したこのサイズの作品はこれだけなんだそうです。

しかし、残念ながら発見されたときはかなり損傷していて、上半分は完全に欠けてしまっていて、絵の具が残っていたのは下半分だけだったようです。
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作品の全体像が確認できるのは欠損前に撮影された白黒写真のみで、その白黒写真を分析して色を割り出して今回の展示会のために1年かけて修復したそうです。

館内では、白黒写真から色を推測した「睡蓮、柳の反映」の全体像の予想図の映像を見ることができます。
松方コレクション展|モネ「睡蓮、柳の反映」の写真

映像では上の写真のように全体像を見ることができますが、今回修復したのは絵が残っていた下半分だけで、完全に欠損していた上半分はそのままの状態で展示されていました。

この上半分がないモネの絵は、戦争などの時代の変動に翻弄されてその大半が失われてしまった「松方コレクション」そのものを象徴しているようで、今回の松方コレクション展のラストを飾るのにふさわしい絵だったと思います。

この痛々しく欠損した作品を見ていると、もうこのようにすばらしい芸術作品が失われないように、また、芸術作品だけではなく、美しい自然や街や1人1人の夢や希望が戦争や天災などの不幸な出来事によって失われないように、世界の平和を祈りたい気持ちになりました。

松方コレクションは美術品のコレクションとしての価値だけではなく、歴史的資料としての価値も非常に高いコレクションだと思います。

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